口蹄疫の病因

Pathogenesis for FMD

(仮訳) 鹿児島大学 岡本嘉六

 

目次

1口蹄疫感染の特徴

2 ウイルスの侵入と最小感染量

2.1呼吸器感染

2.2経口感染

2.3創傷感染

3 ウイルスの第一次複製部位

4 ウイルス血症と組織へのウイルスの広がり

4.1感染動物におけるウイルスの広がり

4.2 ウイルスの二次増殖部位

5 ウイルスの排出

6抗体反応

7持続感染 − キャリアー状態

 

口蹄疫感染の特徴

 個々の動物の感染と群/農場の感染を区別する

 農場の感染は時間とともに高まる

 大きな群はより多くのウイルスを発生させる可能性がある

 群内および群間における病気の拡大は、接触頻度に依存する

 蜜飼いの群ではより急速に広がり、同時期のウイルスの排出もより多くなる

 広域の群は、病気を維持できないかも知れない

 野生動物は、病気を維持できるだけの十分な集団密度がないかも知れない

 個々の感染は、臨床徴候を示す数日前から始まる

 肉牛、羊、および、場合によっては豚では2日前

 乳牛については、臨床徴候を示す4日前までに乳汁中に大量のウイルスを出す

 抗体が形成されるまで、個々の排菌は数日間続く

 羊より牛、牛より豚がより多くのウイルスを作り出す

 ラクダ科の動物は、他の動物種を感染させるだけのウイルスを排出しないと考えられている

 

ウイルスの侵入と最小感染量

感受性のある家畜は、感染した動物または汚染環境との直接的または間接的な接触の後に口蹄疫に感染する。

 感染した動物と感受性動物が接近した時に、飛沫や飛沫核の空気伝播が最も一般的な伝播様式だろう

 ウイルスの遠距離の空気伝播は一般的ではない。温帯地方では、ある種の環境における疫学的状態の下で、これは感染拡大の重要な経路となり得る。

呼吸器感染

呼吸器系は、反芻動物の主要な感染経路であり、ごくわずかなウイルス量で感染を引き起こすことができる。牛と羊は、50%組織培養感染量(TCID50のわずか1025倍で感染させることができる。気道におけるウイルスの定着場所は、エアゾール小滴の大きさに依存する。

豚は、汚染エアゾールの主要な発生源であるが、豚自身は呼吸器感染に関して反芻動物よりはるかに感受性が低い。

汚染エアゾールは、呼気によって最も頻繁に発生するが、ミルクタンカーからの排気、圧力ホースなどの使用によるしぶきなどの結果としても発生する。

経口感染

経口的に動物を感染させるためには、より多くのウイルス量が必要である。それにもかかわらず、豚においては経口感染が重要である。反芻動物は自然条件では経口的に感染することは滅多にない。

創傷感染

ウイルスは、皮膚や粘膜の創傷を介しても侵入することができる。そのような創傷は、粗飼料給餌における草の種、腐蹄症、搾乳器による外傷、牛の拘束中における蹄の外傷などの障害によってできる。

 

ウイルスの第一次複製部位

咽頭と軟口蓋は、一般的に、体内において口蹄疫ウイルスが増殖する最初の組織である。その例外は、皮膚や粘膜の創傷を介してウイルスが侵入した場合である。後者の場合には、ウイルスの最初の増殖は、侵入部位の上皮細胞となる。

層状化し、角化していない軟口蓋背部および咽頭基部の扁平上皮は、最初のウイルス増殖部位となるだけでなく、キャリアー状態におけるウイルスの持続的増殖の場ともなる。羊においては、扁桃腺も重要である。

ウイルス血症の始まりと臨床徴候の発現の13日前に、ウイルスは咽頭から検出できる。

 

ウイルス血症と組織へのウイルスの広がり

感染動物におけるウイルスの広がり

咽頭から広がった初期のウイルスは、所属リンパ管で堰き止められ、咽頭後部、下顎および耳下のリンパ節においてさらなるウイルス増殖を始める。そして、ウイルスは血流中に運ばれる。その結果としてのウイルス血症は、血中抗体が出現して急速に除去されるまでの4日間持続する。

ウイルスの二次増殖部位

口蹄疫ウイルスは、皮膚と粘膜部位の角化し、層状化した扁平上皮に運ばれ、非常に高力価まで増殖するが、それによって、口、脚および乳頭を含めて水疱が急速に形成される。

ウイルスは、心筋、ならびに少量ではあるがその他の骨格筋でも増える。

少量のウイルス増殖は、リンパ節、副腎、すい臓、甲状腺、乳腺および罹患部位以外の皮膚を含む全身の様々な部位でも起こる。

 

ウイルスの排出

ウイルスは、呼気、分泌物と排泄物(唾液、尿、糞、乳および精液を含む)、ならびに、破れた水疱の中に大量に放出される。豚は呼気中に膨大な量のウイルスを放出する。感染豚は、1日当り最大4TCID50を放出し得るが、反芻動物は1日当り最大12TCID50しか放出しない。

臨床的に病気が現れる最大4日前にウイルスの排泄が始まり、このことはきわめて大きな疫学的意味を持っている。

ほとんどのウイルス排出は、ウイルス性水疱出現後約45日で止まるが、その時、抗体ができている。

食道・咽頭分泌液を除く全てのウイルス排出は、感染が起きてから1014日以内に止まる。

脚の病巣部からのウイルスの排出は、口の病巣部より1日から2日長く続く傾向があるので、時が経過した症例の診断目的のために、脚の病巣部はウイルスの適切な材料となり得る。

 

抗体反応

臨床徴候が初めて現れてから35日後に、ELISAによって血液抗体を有意水準で検出できる。最も高いのは、24日後である。ウイルス中和反応試験による抗体検出は、通常、ELISAよりも12日間遅れるが、それは後者の感度が高いためである。

抗体価は、通常、感染後何ヶ月も比較的高水準で推移し、反芻動物においては数年間検出可能なことがある。

豚、とくに成長が早い若齢期においては、抗体は数ヶ月しか検出できない。

口蹄疫に対する免疫は、主に血中抗体によって担われる。

 

持続感染 − キャリアー状態

臨床的回復後に、最大50%の反芻動物は持続感染状態になる。感染は、咽頭および食道上部の組織で持続する。この持続感染、またはキャリアー状態は、動物の免疫状態の如何にかかわらず起こる。

ウイルスは、そうした動物の口・咽頭ぬぐい液から回収できる。回収できるウイルスの量と頻度は、時間が経つにつれて次第に減っていく。

 

様々な反芻動物種におけるキャリアー状態の最大持続期間

動物種

報告されたキャリアー状態の最大持続期間

3年半

9ヶ月

山羊

4ヶ月

アフリカ・バッファロー

5

水牛

< 2ヶ月?

持続感染しない

 

持続感染は、牛とアフリカ・バッファローについては詳細に、羊と山羊ではある程度研究されてきた。その他の多くの反芻動種については十分研究されていない。鹿、アンテロープおよびラクダ科の動物は、キャリアーにならないか、または、短期間のみウイルスを運ぶことがある。

キャリアー動物の疫学的意義は、完全に解明されている訳ではない。